約 1,746,115 件
https://w.atwiki.jp/nicomad_srs_event/pages/651.html
[部分編集] http //www.nicovideo.jp/watch/sm9256005 投稿者コメント1.コメント2.コメント3.コメント この作品のタグ:第3回ニコニコ紅白MAD合戦 「黒組」 レビュー欄 ヘイ! のところが面白かったです。 -- 名無しさん (2010-02-03 12 27 00) まさに誰得の境地。 内容自体はアジバ様が不足していてちょっと残念。 でも、発想はすごく好きです。 -- 名無しさん (2010-02-07 16 02 24) 名前 コメント 第3回ニコニコ紅白MAD合戦 「黒組」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7100.html
前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~ 「あ……は……ぁ…………かっはっ……はぁぁ……ぁぁぁあ……んぅッ!」 のたうつ。灼ける。全身を、裂く。痛み。 苛烈なまでの激痛、憎悪、還り、抉る。 斬られ、裂かれ、割れ、燃え、溶け、砕く。 全身が/精 神が/ 書が/ た呪詛=悪夢/ 亡 霊 が/返され 破壊された術式 破れた 斬られ・た 潰れ 壊&れ !抉れ 燃え 見える。壊れ、た、あの傷が返って、肉を焼、く。 「うっ………ぐぅぁ……がっ……はっ……ぁぁ……ぅあああ……あぁぁぁ……!」 それはあらゆる(それ)はそうです。あれです。ますます寒く暑く辛くなる世界の中心半分 愉快辛苦痛烈開会です。知ってます私の彼は私にそれはその時知りましですか。はい、それらは 歩いて殴ります、知ってます。ですね、私は悪霊を得て、悪霊はあって、あるときを消します。 消した私、私、彼、それ、どれ、あれ、です。です。得ます、捨てます、捨てる時は、が見える 闇はいます。中に巣食って、司令をだす、守護者はです。悪です、%%&から着ます。着てるのは 初期から、後で、(もしく)は、あるます。また、だれが、そうなのです。そうであって、 知ってます。 回る時には、私で見て、中を覗くことで、静かななのです。共通は物質で、吸って、歩きます。 いますは、中に、アレです。呼びます、それは呼ぶことで蹴ります。囁くのはそれです。脳が 手を出して、(転んで、がデータになってあのころは、でと強制します)が言います。 どれがあの人であるかを潰れて呼びます。強制です。人形はゲートで見えないです。そうです。 あれはははは、$’$%%&で、が、君は、P++*GFで、☆でららららららららららら でででえうyっはあはぐyふぁいぶち君とは、ウアskさbksstydq7いうぇぼx そうであってこそ(CJDCU%Y的に、予測指導的にで、ある)ものが呼ぶあるのです。 いぐなああうbヴktびうbt、中にいる、いるイルイ瑠璃ルルるるいるるるるるるるるるるるる 私、あれはいるのでででえ、止めて、助けけけけえええええええええええええええええええ ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ えええええええええええ 「――――あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!」 返された呪詛が、全身を切り刻んだ。血の代わりに、灼けるような激痛がフーケの身体を襲った。 いっそ血を流した方が楽になるのではないか、そう思うほどの激痛に、身を掻き抱く。 「うぅぅっ! うぁっ……あぁっ……がっ……ぐっ……うぅぅ……!」 叫ぶ/荒れ/狂う痛覚が、全身/魂を・麻痺・壊死させる。 動け・ず・路地裏の薄汚れた地面に倒れこむ。 「痛い……いたい……たい……いたいいたいいたいいたいいたいたいたいたいたいたいたい いらい……いらいぃ……いたい……いた……っ……ぁぁ……!」 赤子のように身体を丸め、身体を竦める。何度、痛みを口にしても、それが消える事はない。 体内で、返された呪詛が暴れる。皮膚の下を這うような蟲の感覚がおぞましい。 本来ならば理解すらできないはずのその事象を、フーケは脳に刻まれた情報で理解する。 身体を食い荒らされている、食い破られている、臓腑を咀嚼されている。 呪詛は一切の慈悲なく、フーケを苛む。 「――――っ!」 脳内に刻まれた【式】で強制的に痛覚を遮断する。式を選び出し、実行する。 呪詛を体外へ排出、精神的高揚状態を構築、血流安定、字祷子構成安定、肉体は一時的に賦活。 「ぐ、ふっ……うぅ……ぐぅ……っ! うぁ……うぅ……!」 痛覚の残滓を引きずりつつも、立ち上がる。胸中に宿る憤怒で己の肉体を操作する。 「そ……ぅさ。私は……あぁっ! あ、あ、アイツらを…………あいつらを……貴族を……!」 その瞳にあるは憎悪。全てを燃やし尽くさずにいられぬ闇色の炎。全てを奪われた女の、怨嗟。 フーケ、否、マチルダ・サウスゴータという女の持つ怒りがそこにはある。 ――いや、ソレは本当に彼女=マチルダであったのだろうか 「あ……はは。そうさ……そうだった。私にゃ力があるんだ……。だから……だから…………さぁ」 双眸は天を仰ぐ。それはこの世を怨むような色を帯びている。→だが、それはホントウ? 「壊してやる……壊す……全部……あいつらを……。でも――――」 双眸に宿る色が変じた。言うなれば黒が紅に、青が赤に、緑が黄色に、汚濁した虹色へと変じた。 そこには、異界の、外道の智識が見せる姿があった。それは、あのヴァリエールの娘と 彼女の召喚した使い魔。書の持つ奇跡が幻視する異次元の光景。 「――あはっ☆」 その唇が唐突に薄い半月に歪んだ。無邪気に虫の手足をもぐ子供の酷薄な笑みが張り付いていた。 「なーんだ。なんだなんだなんダァ。それってばぁ、超KY邪魔邪魔チャンじゃなぁいのヨ☆ 殺す? あったりまえじゃなイ。邪魔するのって空気読めて無いって感じ? みたいな? じゃあ、やっぱりあの子達は、殺さないと駄目よねぇ?」 喜色に歪むその顔、そこには既に苦痛はなく、ただただ愉悦と快楽――そして、狂喜が在る。 「ふふっ……んぅっ……んぅっ。あはぁ……あははっ……はは……ぁ、んっ……あはっ」 上気し、紅く熟れた唇に舌が這う。身体を掻き抱く仕草は妖しく、艶やか。はだけた裾から 覗く太股へ指先が蛇の如く、蛆の如く這う。漏れる喘ぎは、悦楽に溺れていた。 「あ……はっ。じゃあ……んぁっ……どうすれば、良いかしら? あ、あ……あ、ある、ジャナイ。 そ、そそうだわ、宝物庫、宝物庫。あそこ……んぅ、いっぱいいっぱいあるの。あら、ソウ! 釣れる……んっ、かしら? つれるわヨン☆ そうカナ? そーゥYO!イイ、イイわぁ! アンタってばナイスアイデアだわぁ♪ ははっ……あははっ☆」 まるで道化師のようにフーケはくるくると踊りだす。袖を長く長く垂らして振り回す。 その姿がまるで彼女ではなく別の何かが乗り移っているように見えたのは、なぜか。 「はぁっ……ああん……んふふっ……あはっ。はは……んっ……くすっ……んぅ……」 誰も通らない路地裏に女の/道化師の笑い声/狂笑が。 * 夜が来る。トリステイン魔法学院の宿舎に宿る光はそこにある暗闇を和らげ、安息の時を約束する。 連なる安息の灯の一つ、ルイズの部屋の中はと言うと―― 「…………死ぬる」 「ああ…………死んだ」 瀕死の状態の少年が二人、床にぶっ倒れていた。厨房で延々と皿を洗い続けたギーシュ、ホールで 女装させられたまま働かされた九朔、無銭飲食分働いたお陰でもうライフポイントはゼロだ。 「アンタ、馬鹿でしょ」 「でも、ダーリンってばかわいかったわぁ。アタシがヴァリエールの代わりにメイドさんで雇って あげたいくらいよ」 「そこ、ダーリン言うな。あと、勝負に負けたんだから部屋からとっととゲラウッ!」 「やぁねぇ、ヴァリエールったら。細かいことを気にしたらハゲるわよ? コッパゲ先生みたいに」 「だれがハゲるか!」 「自業自得」 頭上で繰り広げられるかしましい十字砲火に一言物申したい九朔だが、あの妖蛆と戦った後、再び 妖精亭に戻って働かされたのだ、おまけにルイズやキュルケ達に見られる羞恥プレイつきで。 もう、肉体疲労と精神疲労で身も心もヴォドヴォドだった。 「クザク…………耐えよう」 「ああ……」 突っ伏したまま、ギーシュと共になぐさめあう。 (しかし……) そんな中、九朔は昼の事を思い出す。取り戻した記憶、巨大な蛆、血に宿る魔術の智識。 (虫食いの書物だな、まるで……) 今はまだ黒塗りにされたままの項【ペヱジ】を思う。それがペヱジとは気づかないままでも、 魂に刻まれたソレが九朔に妙な確信を与える。 (戦うたびに戻ってるのか、己【おれ】の記憶は) 一度目はギーシュとの戦い、二度目はあの妖蛆との戦い。確実に戻る智識【ちから】を感じる。 (だが、今はまだ何も言う必要はないか) やかましく自分の仇敵だという少女と騒ぎあう自分の主を思う。自分を無力だと思っている彼女の ことだ、下手な事を言って傷つける事になるのは明白。 この世界へ呼ばれてそこそこ日が経つが、実に分かりやすいルイズの性格はそういうところで ありがたいものだった。 「こうなったら勝負よ! 今度こそぐうの音も出ないくらいにしてあげるわ!」 「あらぁ。貴族同士の決闘はご法度じゃなかったっけ?」 「け、決闘じゃないからいいのよ!」 そして、こういうところも。 「でも、それって言い方変えただけじゃなくて?」 「へ、へぇ……まま、負けるのが怖いのかしら?」 「別にぃ。昼間はこっちはこっちで色々立て込んでただけだったし……まあ、ヴァリエールが やりたいなら良いけど? ああ、でも、時間も遅いしちゃっちゃと終わってくれると嬉しいわ。 ほら、ヴァリエールと違ってお肌のお手入れ大変だから♪」 にこにことからかい半分に挑発するキュルケにルイズの顔が一気に真っ赤になる。血圧無限大で 変身できそうだ。 「きぃぃぃぃ! それなら勝負よ、勝負! 外に出なさいツェプルストー!」 「仕方ないわねぇ、おこちゃまって。じゃ、お付き合いしてあげましょっか」 そういって、キュルケとルイズが部屋を出て行く。もちろん、ギーシュと九朔を放置して。 静かになった室内でタバサの本を捲る音だけがする。 「行ったようだね……」 「ああ……」 立ち上がり、ギーシュと九朔は床に腰を下ろした。 「いや、彼女達の喧嘩は毎度の事だが、よく飽きないものだ」 「お互い、なんだかんだで楽しんでるとしか思えん」 「そうだな」 うんうんと、九朔とギーシュは頷く。そして、そんな二人の後ろでルイズのベッドに腰掛ける タバサは変わらず本を読んでいるばかり。 「しかし、タバサ。汝は行かなくて良いのか? キュルケは友達だろう?」 「そういえば。君はいつも彼女と行動しているな」 「見なくても結果は明白。行く必要がない。それよりも――」 言いながらタバサはほんのページをめくり、ちらりと九朔へと目を向けた。 「あなたに話がある」 「我か?」 特に心当たりがないのだが、と思う九朔。そして隣では驚愕の表情を浮かべるギーシュが。 「ク、クザク……君って奴は……なんという色おとこたわらばっ!」 最後まで言わせず顔面に裏拳を叩き込む。ある種パターンになっている気がしないでもない。 のびたままのギーシュを放置し、九朔は眼の前で読書を続けるタバサへ翡翠の瞳を向ける。 「で、話とは?」 「ここでは話せない」 そういって本を閉じ、のびたままのギーシュを指差す。 「ついてきて」 ベッドから降り窓へと向かうと、タバサは口笛を吹いた。そしてすぐさま、窓の外に一匹の竜が 現れる。 「シルフィードか」 「彼女に関係がある。乗って」 シルフィードの背に乗るタバサに誘われるがまま、九朔も一緒にその背に飛び移る。 「そういえば」 「何?」 「ギーシュは?」 「…………」 視線の先で気絶したままのギーシュ。幾らか間が空いたが、タバサは答えた。 「こうする」 『レビテーション』の魔法を手早くかけ、窓の外へとギーシュを運び、 「で?」 「部屋に」 部屋の窓へとシルフィードを向かわせると、そのままギーシュの体を放り込んだ。実に小気味 良い音を立てて室内をバウンドして転がり、停止するギーシュ。 そのまま生命活動まで停止いなければ良いのだが―― 「もんもらんすぃ~……」 前言撤回、心配の必要すらなかったようだ。頭にたんこぶを作りながら鼻の下を伸ばすギーシュに 呆れつつ、九朔は前に座るタバサへ声をかけた。 「いくか」 「じゃあ上に――シルフィード」 「きゅい!」 そして、シルフィードの背に乗りはるか上空へと向かう。 見る見るうちに豆粒のようになる学院。広がる風景、眼下には夜の帳の中に燈る人の生活の灯が ちらほらと見えるばかり。 「しかし、ここまで来る必要があるのか?」 声をかけた九朔へとタバサが振向く。青の瞳は変わらず感情の色を見せない。 「学院内は目がある。ディテクトマジックでも油断は出来ない」 「そうか。しかし、そこまで気を使わねばいけない話なのか?」 「その通り」 そういってタバサは頷く。 「少なくともシルフィードは韻竜、既に滅びたと思われる種族。その存在が露呈するのは余計な 騒ぎを招く恐れがある。だから、貴方には彼女のことを黙っていて欲しい」 「別に構わぬが、またどうしてなのだ?」 「アカデミーに連れて行かれる可能性がある」 「アカデミー? なんだ、それは? その口ぶりからは、余りいい話ではないようだが」 「トリステイン王立直属の研究機関。あまり良い噂を聞かない場所」 そこまで言って、タバサがちらりとシルフィードへと目配せをした。 「様々な実験を行なう機関と聞く。魔法の実験では飽き足らず、希少な種族を捕獲し生体実験に 用いたり、ばらばらに解剖するという噂もある」 一息で言い切るタバサ、それに絶句する九朔であったが、何よりもそれに一番衝撃を受けたのは…… 「きゅ、きゅきゅきゅいきゅい~~~! お、おねえさま! シルフィそれ初耳の話なのね!」 シルフィードだった。さすがに後ろに乗せてる九朔とタバサを振り落とすほどではないが、相当に 驚いていた。というより怯えていた。 「ししし、信じられないのね! ややや、やっぱりお姉さまに召喚された時に話さなくて良かった! してたらシルフィはばらばらだったのね! いやー! シルフィは死ぬのいやー! もう話さないのね! 下でなんかぜ~~ったい話さないのね!」 「うるさい」 「あいたー!」 杖で頭を殴られ、鳴き声を上げるシルフィード。 「またぶったなのね! 両親にもぶたれたことないのに!」 「殴られもせずに一人前になったものはいない」 「し、シルフィは一人前どころか十人前だってへーきなのね!」 「……」 「……」 沈黙。ひゅー、という風の音が鳴るくらい寒い空気が流れた。 「きゅ、きゅい? おねえさまもクザクも何で黙るの?」 「あー……」 「別に何もない」 「き、気になるのね! なんかシルフィがすっごいお馬鹿さんみたいに聞こえるのね、その言い方!」 そして、再び沈黙。九朔とタバサは互いに顔を見合わせ、無言の内に頷く。 「なに、大丈夫だ。強く生きていけばいつか良い事もあろう」 「人生はまだ長い」 両者、どちらも声にこれといった感情はこもっていない。が、しかし、明らかに 「まあ仕方ない、シルフィードだし」的な響きが含まれていた。 「う、ううう~~~~~! 人をお馬鹿にしくさって二人ともシルフィの背中から落として――」 ――ドクン 異質な音ならぬ音、三人の表情が一斉に変わった。そして全員がある一点へと視線を送る。 眼下、夜の暗闇の中で一際大きい灯を輝かすそれに――トリステイン魔法学院に。 微かな振動音が遥か下方から、大きな灯が揺れる。 「タバサッ!」 「シルフィード」 「りょうかいなのね!」 風を斬り、大気を裂き、翼を鋭角に大加速を行なう。引き剥がされぬよう九朔とタバサは身を屈め 必死にシルフィードの背に掴まる。天上の星のような大きさであった灯が、数える間もなく眼前で 明確な形を持った建造物に変じる。 そして―― 「なんだ、あれは――!?」 九朔はその翡翠に見た。 学院の中心、塔に張り付くソレ。岩と汚濁した粘液質とを混ぜ合わせた皮膚を布で覆う歪な巨人。 夜の中にあっても灯に照らされたそれはおぞましいほど醜悪、有機と無機のヒトガタは吼える。 「あのようなゴーレムは初めて見る」 「きゅい~~!」 タバサの声とシルフィードの鳴き声を聞きながら九朔は下方を見る。学院に張り付いた巨人の その姿、既視感<デジャヴュ>がある。 (我は、一度これをどこかで見たことがある……?) 頭の片隅で鳴り響く鐘の音がひどくうるさい。 見たことがある。それは、遥か昔に。遠い未来に。酷い矛盾が脳内でメビウスの輪を作る。 全身を掻き毟りたくなるような違和感、頭を割らんばかりの鐘の音に叫びそうになる。 だが―― 「あ」 タバサの声に、現実へと引き戻された。覚醒する意識、こちらの様子を気づかれないよう、 再び下方へ視線を、翡翠の瞳を向ける。 そこに映るのは巨人の手が学院へと伸びる光景。そして、学院の壁へと触れ、壁が。 ――腐り堕ちた。 そう表現するしかない。まるで草花の一生を早送りで見るようだった。溶け落ちた壁だったものは 液体とも個体とも付かない状態で地面へと落ち、その周囲すら腐らせた。腐臭が辺りに漂う。 「酷い匂い」 眉を微かに顰め、タバサが口と鼻をマントで押さえる。 「きゅい~~!」 それはシルフィードも同様で匂いが届かない位置まで距離を離す。だが、九朔は変わらず巨人を 見続けていた。そして、見た。巨人の中から現れるその影を。フードを被り、延ばした袖を垂らす 奇怪なその姿を。 「人……なのか?」 それは、夜の中でも目立つ派手な色合いの服装。まるで道化師のような格好。 その人影はゆっくりと、楽しげに、まるで見せ付けるように、右へ左へと踊りながら巨人の手を 伝って穴の開いた塔の中へと入っていく。 「恐らく、あの場所は宝物庫」 「宝物庫? じゃあ、あれは盗賊の類という事か?」 「まず、間違いなく。相手は『土くれのフーケ』と思われる」 そう言って人影の消えた穴へと視線を向けるタバサ。その視線の先から、先ほどの奇抜な服装を した人物の姿が穴の中から、箱を片手に現れた。 「捕まえられぬのか?」 「無理。何故か分からないが、シルフィードが先ほどから怯えっぱなし。近づく事もできない」 「だが――――っ!?」 氷を流し込まれたような悪寒が九朔の全身を駆け巡った。腐臭を伴った粘着質の気配に肌が粟立つ。 邪悪な波動、それは確かに眼下から。翡翠の瞳がそれを見る。そこにいるモノを見る。 それは道化師の仮面。笑顔を貼り付けた、薄気味の悪い仮面。 ピエロのようなド派手な衣装と仕草と相まって、その不気味さが相乗される。 だが、それまで。 脇に挟んだ箱を抱え、道化師がこちらへ一礼する。そして同時、道化師は巨大な質量と共に 一瞬でその場から消えた。跡形もなく、まるで奇術のように。 「今のは……なんだったのだ」 今、先ほどまでそこにいたはずの巨大な質量の在ったその空間を見つめ九朔は呟く。 騒ぎに気づいた人々がようやく外に出てくるのをその視界に収めながら。 ルイズとキュルケはその光景を下から見ていた。勝負を始めようとした矢先の出来事だ。 20メイルはあろうかという巨体が突然底に現れた。少なくともトライアングル級以上にしかできない 芸当のそれ。だが、何故か、それが普通のゴーレムではないとルイズだけは思っていた。 理由は分からない。だが、あれは、【途方もなく危険な代物】だと、ルイズは識っていた。 「あれ、もしかして最近有名な『土くれのフーケ』かしらね……だとしたら、近づかない方が 無難といったところね。ヴァリエール、離れましょ」 「…………」 「ねえ、ちょっと?」 どうして識っているのだろう。あれは、【ゴーレム】ではなくて【■械■】だなんて。 いや、あれはまだ【■械■】じゃない。だって、あれにはまだまだ【位階】が足りない。 アレを呼び出しているわけじゃない。【ゴーレム】を媒介に中途半端な【招喚】をしているだけ。 【■械■】を呼び出すには……必要なのは…… 「ルイズ!」 「……え?」 気づくと、眼の前にツェプルストーの顔があった。何をしているんだという顔で、ルイズはキュルケ の顔を見返す。 「驚くのは良いけど、ここでぼーっとするのはやめてよね。下手して踏まれたらこっちが寝覚め 悪いでしょ。ほら、行くわよ!」 「え……うん」 腕を引っ張られるがまま、ルイズはゴーレムと距離を取る。だが、ルイズの瞳はソレから離れない。 自分が今何をしていたのか、ルイズはまだ気づいてはいない。 記憶は閉じられ、彼方へ。 今はまだその時ではないのだから。 前ページ次ページゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~
https://w.atwiki.jp/shachozero/pages/34.html
原作を知らない人のためにまったりと用語解説を作ってみた 遊戯王編 間違ってるのあったら訂正よろしく 遊戯王に関係する用語 社長:海馬瀬人の愛称。由来はKC(海馬コーポレーション)の社長であることから。 決闘(デュエル):カード(デュエルモンスターズ)を使って相手をフルボッコにすること。もしくは、カードの対戦をさす。このスレでは概ね前述のほうが使われる。ゼロの使い魔の決闘は下記項目参照。 デュエルディスク:KCの技術を結集して作られたソリッドビジョン搭載のカードマシン。腕に装着するタイプであり、色々と高性能。 ソリッドビジョンシステム:社長が開発したシステム。カード情報を読み取り衛星からデータを送って3Dのビジョンを作り出すシステム。幻のはずだが、なぜか人を吹き飛ばしたりする不思議なシステム。 嫁:基本的に海馬社長の持つ「青眼の白龍」を指す。究極嫁はその進化系。 青眼の白龍:(社長が居た)世界に三枚しかないレアカード。最強の攻撃力を持つ(尤も、その設定は薄れ始めているが)。攻撃力:3000 守備力:2500 青眼の究極竜:嫁を三体融合したもの。犬で言うとケルベロス的なビジュアル。でも、基本的に負けフラグになる可能性大。攻撃力:4500 守備力:3800 滅びの爆裂疾風弾:滅びのバーストストリーム!! 嫁の必殺技。同名の魔法カードも存在する。究極嫁の必殺技は「アルティメットバースト」。社長が嫁で攻撃するときに声高らかに叫び上げる。 攻撃の無力化:時空の渦を作り出し、攻撃を完全無力化する効果がある魔法カード。OCGではトラップ。 ミノタウルス:牛の化け物。元祖○○族最強のレアカード、の割りに弱い。上位版に激昂のミノタウルスが居るために最近では見かけない。攻撃力:1700 守備力:1000 XYZドラゴンキャノン:ユニオン(特殊合体)モンスター。Xヘッドキャノン、Yドラゴンヘッド、Zメタルキャタピラーの合体した姿。手札一枚と引き換えに相手フィールド上のカードを破壊するので強い強い。でも、基本は神の生贄用。攻撃力:2800 守備力:2600 Xヘッドキャノン:合体要員その1。攻撃力:1800 守備力:1500 Yドラゴンヘッド:合体要員その2。XYドラゴンキャノン、YZドラゴンキャタピラーの召喚要員でもある。攻撃力:1500 守備力:1600 Zメタルキャタピラー:合体要員最後の刺客。XZキャタピラー・キャノンの召喚要員。 攻撃力:1500 守備力:1300 死のデッキ破壊ウィルス:攻撃力1000以下の闇属性モンスターを生贄に菌をばら撒く。攻撃力1500以上の相手モンスターはすべて墓地に行くが、コレを伏せた瞬間失敗フラグが立つ。 エネミーコントローラー:コマンド入力により敵を操ることから、社長の合体能力を発動することなど、様々な効果を得る。サレンダーするなら→→A。魔法カード。 ふぅん:社長の口癖。これは津田さんが原因だと私は思います! ふつくしい:社長の口癖その2。美しい……の「う」が「ふ」に聞こえたことから。 ずっと俺のターン:相手に攻撃させない俺ルール発動。でも、基本は遊戯のバーサーカーソウルを指す。 神を見せてやる:オベリスク召喚時に言う言葉。派生語もいくつかあったりする オベリスクの巨神兵:別名「破壊神」。伝説の神のカード。近接戦闘ガチムチ系。場のモンスター2体を生贄に、攻撃力∞の攻撃を放ち、場のモンスターを全滅、相手に4000のダメージを与える。唯一神のカードで攻撃力、守備力が定まっているもの。攻撃力:4000 守備力:4000 社会人:オベリスクの別称。破壊神がなまってこうなった。左遷させられたり、降格したりと苦労は多い。現在は派遣社員でプレイヤーを転々としている。 セト様のスイッチ:テンションスイッチ。背中にあると噂されている。押すとテンションが変化し、周りを戸惑わせる奇行、狂言に走ったりするが本人はいたってマジメ。決してNHKの某番組のパクリではない。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/779.html
「俺の名はペイジ」 ドォッシュウウウ 「ジョーンズ」 ボシュウッ 「プラント」 ジュウウウウウウウ 「ボーンナム 血管s」 デロリン 「ルン!ルン!ルン!」 ゴシャァアッ 「ズラ!」 ボシ─── 「え!?…オレ? 外に居たのは……おれだったァ── 棺桶の中に居たはずなのにィ~~~~」 ゾバゾバッ 爆音が響き、土煙を巻き上げて何かを呼び出す閃光。 そして、土煙が晴れる度に日光を浴びる度に呼び出した使い魔が溶けて消えていく。 それが今日の『ゼロのルイズ』の『サモン・サーヴァント』の晴舞台であった。 「おいおい、一体何回死なせるんだよ!」 「ゼロじゃなくて死神のルイズか!?」 「十回超えてるじゃねぇェかよぉぉお! なあ、帰っていいだろぉぉおお? なぁぁああ、こく……コルベールの先生よぉぉおお!」 爆発と召還と消滅の一連の動作を遠巻きに見ている外野もいい加減飽きてきたらしい。 最初は囃し立てるような大きな声で野次を飛ばしていたが、 今はもうささやきのようになっている。 「……ミス・ヴァリエール」 生徒に比べて比較的近く、しかし爆発に巻き込まれない絶妙な位置に立っていたハゲが ルイズと呼ばれた少女に話しかける。 「予定時間を考えると今日は次で最後です。 それで駄目だったら、翌日にしましょう。まだ猶予はありますからね」 声を掛けられた少女は、その言葉に一際表情を引き締めた。 ここで失敗したら明日は余計にバカにされると分かっているからだ。 人一倍プライドの高い彼女にとってそれだけは許してはならない事なのだ。 「どーせ駄目なんだからやるだけ無駄だって。 なんせ『ゼロのルイズ』なんだからなァアア!」 最後、という言葉に勢いを取り戻した野次を無視し、 ルイズは呪文を口にし、意識を集中させていく。 「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ…… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに……答えなさいッ!!」 ドッグォオオオン! 何度目か分からない呪文の後、 一際強い爆発と共に派手に土煙が上がった。 ───────ゼロのメイジとアホの使い魔 「んだァ?こりゃあ?」 冬の寒さがいよいよ到来してきた頃、 仗助や康一と『トラザルディー』で昼飯を食っての帰路、 心身共に健康になった億泰は『ソレ』に眉を顰めて無い脳みそを回転させていた。 『ソレ』は家の扉の真ん前に出ていた『鏡』だった。 高さ2メートル、幅1メートルはありそうな楕円形で、しかも宙に浮いている。 スタンド使いならすぐさま警戒しそうな所だが、 吉良吉影が倒されて以来スタンド使いによる目立った事件が無かったために 億泰はすっかりと油断していた。 一般人でもやりそうな何かを投げつけるような行動もせず、いきなり鏡に触れた! 通らないと家に入れなかったため、さっさと潜り抜けようと思ったのだ。 バリィ! 「うっ、うおおおおおおおお~~~~~~~ッ!?」 かつて『レッド・ホット・チリ・ペッパー』に地下ケーブルへと 引きずり込まれた時のようなショックを受け、 そのまま倒れこむようにして鏡へ飛び込んでしまった! そして絶え間なく続く衝撃に意識を手放してしまう。 油断とはいえこの男、オツムが足りないのだろうか。 「っつ~~~~~~~~」 「あんた誰?」 誰かに呼びかけられた気がして、頭を抱えながら億泰は目覚めた。 まず、地方とはいえ五万三千の人口を抱える杜王町では 見る事のできないような澄んだ空が目に入った。 次に、ピンクが強く出たブロンドの髪をした少女が覗き込んでいる事に気がつく。 よく見ると黒いマントに杖を持っていて、 まるで昔兄貴に読んでもらった絵本に出てきた魔法使いのような格好だ。 遠くにはお城まで聳え立っている。 (おいおい~~~!俺は家の前に居た筈だよなァ~~~! なんだこの状況はよォ。外人さんに囲まれてんじゃねえかぁあ~~!) 「貴族を無視していいと思ってるの! 私が誰かと尋ねてるの!さっさと答えなさい!」 珍しく思考に没頭する事となった億泰だったが、 その女の様子にプッツン由花子を連想してしまい、 ふくらんだ風船が萎んだような気分になった。 答えないのも面倒くさそーな気がして、投げやりに答える。 「俺は虹村億泰…だ」 起き上がりながら周囲を見渡すと、 ルイズと同じような格好をした少年少女と、ハゲ。 そしてその周りには……何体ものモンスターが! 「ニジムラオクヤス?変な名前ね。 一体どこの平民n」 「ってなんだってェーーーーっ!! 『ザ・ハンド』!」 ズギュン! 他の使い魔達を見て思わずスタンドを発現する。 「プッ!」 「アハハハハハ!流石『ゼロのルイズ』だ!」 「フッフッフッフハハハフフフフヘハハハハフホホアハハ」 「ウケッウケッウケコッウコケウコケ ウヒャホコケコケコケケケケケケケケコケコ」 「『サモン・サーヴァント』で平民を! それも頭の飛び切り悪そうなのを召喚したぞ!」 「いや、頭がおかしいんじゃないか!? いきなり叫んでるぞアイツ!」 その様子を見て周囲の生徒で笑いが巻き起こった。 確かに頭悪いのは事実だけどよォー、 としょんぼりしながらスタンドを解除する億泰。 どうやらこの中にはスタンド使いも敵もいないらしい。 その裏でルイズは億泰のスタンド発現に続き、 他の生徒の爆笑のせいで完全にセリフがぶった切られてプッツンしていた。 「ミ、ミミミミミスタ・コルベール! 再召喚させてくだs」 「NO!NO!NO!NO!NO! 君はこの儀式を愚弄するのかね!ミス・ヴァリエール! それも!今日の最後の猶予で! 平民とはいえ成功したならやり直しは有り得ないィイイ!」 だが、更にセリフを潰されながら拒否されてしまった。 「でも平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!」 「例外は認めないィィイイ! だから彼を君の使い魔にするんだ。早く続けなさい」 さらりと言われ、ルイズは諦めたように返事をした。 「………分かりました」 立ち尽くしている億泰へと改めて目を移す。 180サント近い背に、間の抜けた顔つき。 どうやったって好意的には見れないが、諦めたようにルイズは歩み寄りながら呪文を唱える。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 杖を億泰の頭に乗せ、力ずくでしゃがませて額に移す。 「イテ!イテェ!なにしやが…」 (さよなら、私のファーストキス) ズキュウウウウウウウウン! 喚く億泰を無視して!心で涙を流しながらも強引にルイズはキスをした! ただし、一瞬だけ。触れるなり思いっきり突き飛ばすように離れてだが! 「終わりました……」 「………」 ブワァァ! と、急激に億泰が涙を流しだした。 「お、俺が…女の子から…チューされた…?」 スタンドも月までぶっ飛ぶ衝撃を身をもって味わい、 そんな事で幸せを噛み締めている億泰だったが… 「くぁ!?」 その余韻は左手に突如襲い掛かった熱にかき消された。 焼けた鉄板に押し付けるような熱さに思わず億泰は草原の上を転げまわる。 「あづ、あち、アチィイイ!」 「五月蝿いわね……使い魔のルーンが刻まれてるだけよ」 そう言いつつも、ルイズの心はやっと安堵できていた。 『サモン・サーヴァント』も『コントラクト・サーヴァント』も成功した。 だが、その一方で平民という事実がルイズに重くのしかかっている。 この男が今日召喚された使い魔の中で『最も恐ろしい』という事も知らずに……
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1711.html
二人が次に向かったのは、服屋。 正直言うと、片手であのベルトだらけの服はちと厄介だ。 キュルケ達もそこに居たのだが、着せ替え人形よろしく服を次々と持ってこられた事にはさすがに辟易した。 動き回り剣を使うだけあってスカートは問題外だ。 (まったく…テレサが見たらなんと言うだろうかな…) 大体予想は付く。 あの人を食ったような変わる事の無い微笑を浮かべながら『よ、お前もヤキが回ったなイレーネ』というとこだろう。 結局、軽装のズボンと長袖のシャツに落ち着いた。 体温調節機能を備えているので、基本厚着をする必要は一切無いのだ。 だが、マント装備のため、外見上はあまり変わったようには見えない事にブーイングが起きていたのは割愛だ。 「相棒も大変だねー」 カタカタと音を出しながら背負った剣が言葉を吐いたが無視しておく。 夜頃、学院に戻りルイズの部屋に戻ると、イレーネがおもむろにデルフリンガーを抜いた。 「何で部屋の中で剣なんて抜いて…」 ルイズがそういい終える前に、手に持ったデルフイリンガーを…思いっきり!床に!突き刺したッ! そうすると、デルフリンガーに背を預け座る。 「相棒…抜いてくれるのは嬉しいんだけど、これ剣としての使い方間違えてねぇ?」 「私達はこう使っているんだがな」 床の上なので、硬さは大して野外と変わらない。という事はこのスタイルが一番楽なのだ。 毛布は、極寒の北の地でも普通に過ごせるため必要は無い。 「なななな、なにやってんのよ!床に穴が空いたじゃない!!」 「気にするな。次からはここに刺すから、これ以上穴は増えん」 「そういう問題じゃなーーーーーーい!!」 「もう寝ろ」 感情の起伏が恐ろしく激しいルイズ。方や起伏が恐ろしく一定で常に冷静なイレーネ。 この二人実に対照的である。 「嬢ちゃんは、もちっと落ち着いた方がいいし、相棒はもう少し、感情出してもいいと思うね。俺は」 「「ほっとけ」いて!」 ここだけは声が被った。 翌日、ギーシュと決闘してから、一部を除いて余計距離を開けられるようになっているため、例によって食堂には入っていない。 夕方頃になるとすっかり懐いたシエスタが寄ってくるのだが、今日は来ない。 まぁ、そんな時もあるのだろうとし、誰も居ない場所でデルフリンガーを振っていた。 「相棒ってさ、なんで右腕だけ異様に弱いんだ?いや、弱いっていうか、他が強すぎんだけど」 「今の私には必要無かったんでな。元の腕は弟子の餞別にくれやった」 「……へ?」 多分というか、絶対理解できてない。まぁそりゃそうだ。 「体の中に化物を入れていると言っただろ?その力を使えば、私達は四肢が切断された程度なら、元に戻せるんだよ」 「……いや、でもくれてやったってのは?」 「属性が同じなら、他人の腕も繋ぐ事ができる。まぁ私は攻撃型で完全な再生はできんから、常人程度の腕しか再生できん」 「……ほんと、何でもありだな。相棒は」 「…本来なら再生するにも数ヶ月かかるものだが… それにお前、使い手とか言っていたが、剣を持った時と、そうでない時。力とスピードが違うんだが、分かるか?」 「…忘れた」 「やれやれ…役に立たん」 「ひでぇ!でも許す、相棒だから」 そうしていると、一人誰かが近付いてきた。 「確か、マルトーとか言ったな。何か用か?」 現れたのは、学院における厨房責任者こと料理長マルトーだ。 「…頼みたい事がある」 「…その様子だと、ここの貴族連中には頼めん事と見たが」 「その通りさ…シエスタがモット伯って貴族に連れていかれちまったのさ」 「何者だ?」 「気に入った若い娘を連れて行って囲ってるってやつさ」 (本当に、大してどこも変わらんものだ) イレーネが居た場所でも『孤児は、少年は北の地へ、少女は北東の地へ送られる』と言われているぐらいだ。 組織に属する戦士は、ただ一例、クレアを除いて全てこれに当てはまる。 当然、イレーネも親を妖魔に殺されたクチだ。 「それで、私に頼みというのは?」 「…シエスタを助けてやって欲しい」 (さて、どうしたものかな) そう考える理由は、存在そのものにある。 これが妖魔、覚醒者絡みなら二つ返事で受けるのだが、相手は人だ。 基本的に組織は人間同士の争いに加担する事は無い。 離反してからも、隠遁して暮らしていたので、その思考は特に変わっていない。 「シエスタからよく聞かされてたんだよ。 『ハーフエルフかもしれないけど、怖い人じゃないし、わたし達の味方』だって」 ハーフエルフでもないし、味方云々に関しては対妖魔でなのだが。 「私はギーシュしか相手にしてないから分からんのだが、お前達にとってメイジというのはどういう存在だ?」 「平民は貴族相手だと何もできない。こういう事があっても天災だと思って諦めるしかないのさ」 (なるほど。平民にとってメイジというのは妖魔のようなものか) 潜み、いつ自分達に牙を向くか分からない。という点では似たようなものかもしれない。 ただ、脅威が妖魔並みとは言っても人だ。 「我々は、妖魔を狩る存在だという事は聞いているな?」 「あ、ああ」 「基本的に我々が妖魔を狩る時は、街や村から依頼があった時でな。依頼を受けるにあたって、必要な物が出てくる」 そこまで言うと、全てを話さなくても理解したようだ。 「…金って事か?」 「まぁそうなる」 マルトーが唸る。モット伯はトライアングルだと聞いているからだ。 命を賭けるかもしれないのに、ただで行ってくれというのは虫が良すぎるというものだろう。 シエスタからも魔法は使えないと聞いているから、なおさらだ。 「…どれぐらいなんだ?」 「相場が分からんから何とも言えんが…妖魔一匹なら大体…そうだな、あの袋ぐらいだ」 そう言って指差すのは、詰めれば両手からはみ出るかどうかというぐらいの大きさの袋。 そう言われてマルトーが言葉に詰まる。 それで金貨なら、平民一人が払える額ではない。 本来妖魔退治は、街や村などの集合体から依頼されるもので、個人からの依頼というのは滅多に無い。 だが、マルトーにも意地があった。 目の前の剣を持ったやつなら、貴族に一泡吹かせてやれるのではないかと。 なにより、今晩中にでも傷物にされかねない、シエスタの事が気にかかっているのだ。 「…後からでもいいのか?」 「ああ、妖魔相手でも、我々が死ねば渡す必要も無いからな」 「…金は他の連中にも頼んでみるから…シエスタを頼む」 「場所は?」 マルトーからモット伯の屋敷の場所を聞きだすとデルフリンガーを背負う。 「組織の元ナンバー2イレーネ、その依頼確かに承った」 そう言うと同時に、モット伯への屋敷へと歩き出した。 「お、相棒、いま少しだけ感情が動いたな」 デルフリンガーが小さく言ったが、それは本人には聞こえていない。 モット伯の館は妖力解放しなくても、走って10分程度の距離だ。 もちろん、人が出していい速度ではないし、森の中を突っ切り最短距離で向かった結果だ。 まだ、日は出ており、屋敷がよく見える。 正面には背中に翼が生えた犬を連れた衛兵が居た。 例によってフードとマントで姿を隠したまま近付くが、当然衛兵はそれに気付く。 「ここはモット伯の屋敷だ。何者か知らんが今すぐ引き返すんだな」 「モット伯に会わせてもらうぞ」 女の声だったので、またモット伯が女でも呼んだのかと思って、少し気が抜けたのだが、翼犬は唸り声を上げている。 「お、おい!大人しくしろ!」 衛兵の静止を振り切り、時間差を付け空中から襲い掛かる。 こうなれば、どうしようもない。死体の処理に頭を悩ませたが、聞こえたのは翼犬の悲鳴だった。 「…随分と手荒いな」 翼犬を見るが、無数に切り裂かれて倒れ伏せている。 残りの翼犬も、次々に襲い掛かるが、全て喰らい付く直前で何かに切り裂かれているのを見た。 「どうした?お前達が案内しないのなら…この犬と同じようになる事になるのだが」 そう言ってフードを外すと、当然ながら衛兵は固まる事になる。 「エ、エルフが…!」 「どうする?」 一歩近付くと、衛兵が大急ぎで門を開ける。 屋敷の中に駆け込んでいったあたり、取り次ぐ気にはなったようだ。 ちなみに、翼犬は斬ったが、人を斬る気は無い。相手が掟を知っていないからこそ言えるハッタリである。 今日手に入れ、今湯浴みをしているメイドの事を考え上機嫌だったモット伯だが、飛び込んできた衛兵を見て不機嫌になった。 「…なんだ?」 「エエ、エルフが…モット伯に会わせろと…」 「…なんだと!?」 「既に先住魔法と思われるもので、翼犬が何かに切り裂かれました…」 「相棒、使ってくれるのはいいんだけど、他のやつに見えないんじゃ、俺の活躍ってもんがさ…」 「そういう技だ」 「せめて使わない時も手に持つとか…」 愚痴るデルフリンガーだが、食われたり使われない連中よりマシだと自覚しろ。 「てか、腕がヤバそうだが、大丈夫かね?」 「使う度に妖力を使って修復に当てねばならんのがな…」 そう言うと、妖気を右腕の修復に当てる。5秒もすると元通りの腕になっていた。 「おでれーた、大したもんだな」 そうしていると、かなり遠巻きに呼ばれた。会う気にはなったという事だろう。 「これは、これは…我が屋敷にエルフの方が何の御用ですかな?」 「単刀直入に言う。学院から連れて行ったメイドを返してもらうぞ」 「何を馬鹿な…!あれは正式な手続きを踏み雇い入れたものだ!」 譲る気が無い。そう判断したが、ちと詰まる。掟がある以上殺すわけにもいかない。 基本的に自己申告なのだが、人であるという精神的意味合いが強いのだ。 人を殺せば、妖魔と同じになる。そういう観点から、No4オフィーリアを除いて進んで人を斬る戦士は少ない。 イレーネもモット伯そのものに手を出す事はできない。 少し膠着状態が続いたが、好色なモット伯ならではの言が出た。 「ならば、交換条件として、あなたが私と一晩付き合うというのはどうですかな?」 半分冗談だが半分本気だ。 基本的に戦士のほとんどは整った顔立ちで美形に入る。 イレーネも例外ではない。まぁそのあたりもエルフと思われてる理由の一つだろう。 それを受ければ、社交界での話しのタネにもなるし、受けなければメイドをそのまま手元に置くことができる。 エルフといえどトリステインの貴族を殺して、国を相手にできるはずがないという事から、そう言ったようだ。 「なるほどな…こんな体でよければくれてやるよ」 そう言って服に手をかけると、モット伯の顔が緩んだ。 だが、一瞬で恐怖面に変わる事になる。 「どうした?付き合ってくれるんじゃなかったのか?」 「うぁ…ば、化物!!」 そう叫ぶと杖を掲げ、その先から水流が竜のように渦を巻き、イレーネに襲い掛かる。 素早くその場から跳躍するが、その後を追うように水が追ってきている。 「確かに、これならばメイジが妖魔のように恐れられているというわけだ」 言いながら避けるが、上の方から二つに分かれた水流が襲ってきた。 体勢も、少しばかり悪いためかわしきれないはずだ。 「ある程度、分かれて攻撃する事ができるという事か。それなりの実力者なのだろう。だが…高速で奔る無数の剣の前には全ては無意味…」 高速剣は、攻撃力の高い技だが、防御力も高い。無数の剣によって接近する事もできないからだ。 攻防一体の技と言っていい。鋭敏な妖気探知能力を持ち先読みで防ぐ事のできるテレサかクレアや 上位No、それも深淵の者クラスの覚醒者ぐらいしか止められる者は居ない。 魔法で操られている水といえど、その圧倒的な剣の壁を抜くことなどできるはずはない。 全てイレーネに命中する手前で四散する事になった。 「さて…こうなってくると私としては…どうするべきなのだろうかな」 ちょっと壊れかかっているモット伯だが、まだ杖を離す様子は無い。生命線なのだろうから当然だろうが。 そこに一瞬間を空けて、何かが爆発するような音がした。 三割の妖力解放。目の色も変わり、顔つきが変わり妖魔に近くなる。 そのままイレーネがモット伯に近付く。 その途中にある、装飾品や壁などが無数に切り刻まれている光景を見て、杖を落とし崩れ落ちたモット伯が叫んだ。 「あ、あのメイドなぞくれてやる!だから…私のそばに…近寄るなァーーーーーーー!!」 四つん這いの姿勢で這いずり逃げながら、顔をこちらに向けながらそう叫ぶ。 それだけ聞くと、妖力を抑える。短い時間とは言えあまり使いたいものではないのだ。 「なら返して貰うが、次に同じような事があれば…そうだな、屋敷が細切れになると思え」 そこまで出来ないのだが、まぁハッタリは使えるうちに使っておくのが最善だろう。 完全に腰を抜かしたモット伯が頷くのを見ると、シエスタを連れてこさせた。 「話は付けた。帰るぞ」 「あ、あのモット伯とです…か…」 交渉で応じられるとはシエスタも思っていなかったのだろうが、ホールの惨状を見て納得したようだ。 「そういう事だ。行くぞ」 「は、はい!」 ちなみに、走ってきたため、シエスタを体に掴まらせて学園へと戻った。 学院に戻ると、マルトーが袋を手に待っていた。 「仕事は成した。任務完了だ」 「良かったな…シエスタ!本当に良かった…!」 今にも泣き出さんばかりだったが、シエスタが袋に気付いた。 「マルトーさん…この袋は?」 「ああ、お前さんのメイド仲間や、コック連中にワケを話して少しづつだが、出してもらったんだ」 中に入っているのは金貨だ。それを見てシエスタが目を丸くした。 「これって…!」 「メイジと戦ってもらったんだからな…これぐらいは当然だろうよ。どうだ、足りるか?」 「問題無い」 淡々と交わされる会話だったが、シエスタは少し残念そうだ。 イレーネが助けにきてくれた事は仕事としてだという事に。 「それは、後から黒い服を着た怪しいヤツが取りに来る。そいつに渡せ」 「後から来るって…これは、あんたが受け取るんじゃないのか?」 「報酬は組織が直接受け取る事になっている。…ああ、私とした事が迂闊だったよ。 組織の連中は私がここに居る事を知らないんだった。という事はそれを受け取るやつは来ないという事だ。参ったな、どうしたものか」 殊更わざとらしく言うと踵を返し、ルイズの部屋へと戻ろうとする。 「…もしかすっと最初からそのつもりで!?」 「さぁな。まぁ万が一来れば渡せばいいだろうが、それまで、そいつはお前達のものだ それより、明日にでも礼を言っておくんだな。私のみたところ相当な額だ。お前のためにそれを出してくれた仲間は、それよりも得がたい存在だという事を覚えておけ」 「は、はい!」 さっきまで、少し暗かったシエスタの顔が一気に明るくなった。 イレーネが去り、マルトーとシエスタの二人だけになったが、マルトーのテンションは最高峰といったとこだ。 「あいつは、魔法じゃなくて剣を使うんだよな!」 「わたし達が見えない程らしいんですけどね」 『高速剣』の他に、魔法学院の平民たちから呼ばれる『我らの剣』と言う新しい二つ名が誕生した瞬間でもあった。 ルイズの部屋に戻ると、少し時間を空けていた事に対してルイズが怒っていた。 「主人を放ってなにやってたのよ」 「少し用事をな」 そう言って床にデルフリンガーを突き刺し背を預ける。 使い切っていないとはいえ、回復は遅い。休める時に休んでおくにこした事はないのだ。 「あー、今、相棒少し笑ったね」 「ん、そうか?」 「嘘!?ちょっと見せなさい!」 ルイズがそう言って詰め寄るが、表情は何時もと変わり無い。 インテリジェンスソードであるデルフリンガーだからそこ、分かったようなものだ。 (もう少し、感情を表に出してくれると、俺も使われ甲斐があるってもんなんだが) まぁ少なくとも、感情が無いというわけではないと分かったので、よしとする事に決めた。
https://w.atwiki.jp/actors/pages/6994.html
ジャイロ・マットスをお気に入りに追加 ジャイロ・マットスのリンク #blogsearch2 ジャイロ・マットスとは ジャイロ・マットスの72%は果物で出来ています。ジャイロ・マットスの10%は保存料で出来ています。ジャイロ・マットスの7%は怨念で出来ています。ジャイロ・マットスの4%は乙女心で出来ています。ジャイロ・マットスの2%は食塩で出来ています。ジャイロ・マットスの2%は税金で出来ています。ジャイロ・マットスの1%は元気玉で出来ています。ジャイロ・マットスの1%はかわいさで出来ています。ジャイロ・マットスの1%は勢いで出来ています。 ジャイロ・マットス@ウィキペディア ジャイロ・マットス ジャイロ・マットスの報道 gnewプラグインエラー「ジャイロ・マットス」は見つからないか、接続エラーです。 冬のソナタ またでるよ 冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 DVD BOX(初回限定 豪華フォトブックレット&スペシャル特典ディスク付) 本当に長い間、待たせてごめんなさい。「冬のソナタ」韓国KBSノーカット完全版をいよいよお届けします。 映像は韓国KBSのオリジナルそのままに、音楽に関してもユン・ソクホ監督が想いを込めて監修し、一部楽曲を変更しました。初回限定特典にはぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/ユン・ソクホ監督&田中美里の対談スペシャルDVDの他、DVDオリジナルポストカード、シリアルNo付 豪華フォトブックレット(20P)を封入しております。 今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!)に加えて、映像特典の【スペシャル短編集】には、ペ・ヨンジュンのスノーボードシーンの撮影風景も収録しています。 【ここが違う!8つのポイント】 ◆今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!) ◆ファン待望の「ダンシング・クィーン」「白い恋人たち」をついに収録。 ◆日本語吹替を再収録。萩原聖人さん、田中美里さんが担当、その他主要人物もなつかしいあの声で。 ◆本編は日本語字幕に加えて韓国語字幕も収録 ◆一部変更した楽曲をユン・ソクホ監督が想いを込めて監修!(一部BGMはオリジナル版より変更されています) ◆<初回限定特典1>スペシャルDVD:★ぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/★ユン・ソクホ監督&田中美里の対談 ◆<初回限定特典2>豪華フォトブックレット:シリアルNo付(20p) ◆<初回限定特典3>DVDオリジナルポストカード3枚 ジャイロ・マットスのキャッシュ 使い方 サイト名 URL ジャイロ・マットスの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ ジャイロ・マットス このページについて このページはジャイロ・マットスのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるジャイロ・マットスに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/151.html
「宇宙の果てのどこかを彷徨う私のシモベよ… 神聖で美しく、そして究極の使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに…答えなさいッ!!」 激しい爆発と共に呼び出されたそれは、その場にいた誰も想像しなかった物だった。 岩、まずはそう見えた。しかしそれには顔があった。 まるで人間が生きたまま石に変えられたようなおぞましいオブジェ、それには生きる物全てを畏怖させるような気配が感じられる。 普段ルイズを嘲笑している者達も今は声一つあげていない。 何故自分は震えているのだ?『ゼロ』が召喚した不気味な岩を見ているだけなのに。 生物的本能による恐怖、という解答に彼らがたどり着くことはついになかった。 一方のルイズもまた不可解な感情に苦しんでいた。自分の呼び出した使い魔、下僕となるべき存在、そのはずなのに。 何故体が震えて動かないのだろう。何故こんなに絶望的な気分になるのだろう。 何故この塊を見ていると、生きたままヘビに飲み込まれるカエルの心境を考えてしまうのだろう。 その答えを考える猶予はルイズには与えられなかった。 誰一人声の出せない状況下、足のすくんだルイズの目の前でそれがゆっくりと動き出したからだ。 太陽すらも克服した究極の生物がハルケギニアの大地に解放された瞬間だった。 ハルケギニア西方に長い歴史を持つ王国があった!歴史ある国家故の伝統としきたりに支配されたこの文化! その名をトリスティン王国! そしてその中に『魔法』の能力で王国を支配する貴族がいた! 『魔法』は彼らに伝わる奇跡!真の支配者の力をもたらす! しかし!ある時その王国は忽然と歴史から姿を消す!無数の吸血鬼を残して! なぜなのか!どこへ行ったのか!謎の全てはあの『使い魔』にあった! この物語は異世界から召喚されたゼロの『使い魔』にまつわる人々の 数奇な運命を追う冒険……にはならなかった!残念ながら! 究極の使い魔 完
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/10095.html
【TOP】【←prev】【Wii】【next→】 メジャー Wii 投げろ ! ジャイロボール !! タイトル メジャー Wii 投げろ ! ジャイロボール !! 機種 Wii 型番 RVL-P-RMEJ ジャンル スポーツ(野球) 発売元 タカラトミー 発売日 2008-2-7 価格 7140円(税込) メジャー 関連 Wii メジャー Wii 投げろ ! ジャイロボール !! メジャー Wii パーフェクトクローザー 駿河屋で購入 Wii
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1595.html
朝もやの中、セッコとルイズとギーシュは馬に鞍をつけていた。 ルイズとギーシュが乗馬用のごつい靴を履いているのが不安で仕方ねえ。 どんだけ遠いんだ。 そういやギーシュって何ができるんだっけ。ええと・・・ 錬金。これは便利だ、うん。青銅と石以外に何を出せるか知らねえけどな。 固定化。脅迫気味にスーツにかけてもらったが、ルイズに話すと「ドットの固定化は気休め」って言われたっけ。微妙だ。 銅像。いっぱい出せるみたいだがあんまり強くないし目立つ。 やっぱし、秘密っぽい作業には向かねえよな。 こいつ自体目立ちたがり屋だし。 こっそり動くのに向かないと言えばルイズもだ。 セッコ的にルイズの爆発は凄い能力なのだが、 ルイズは爆発を「爆破攻撃」として使うことを非常に嫌がるので期待できない。しかも目立つ。 セッコが一人で悩んでいると、ギーシュが突如改まって話し始めた。 「お願いがあるんだが・・・」 「んん?」 「僕の使い魔を連れて行きたいんだ。」 「どこにいるんだあ?」 「ここ」 ギーシュは地面を指差した。 その直後、もこもこと地面が盛り上がり、熊ほどもある茶色の生き物が姿を現した。 ギーシュがそれに抱きつく。 「ヴェルダンデ!ああ!ぼくの可愛いヴェルダンデ!でも、最近ちょっと太り過ぎじゃないかな?」 「そいつヴェルダンデって名前だったのかあ。」 前言撤回、ギーシュ(の使い魔)は物凄く使える。 シルフィードに勝るとも劣らねえだろう。 パワフルだし、高速で地中を進める。 しかもオレと違って穴が残るから人の輸送も可能ときてやがる。 陣の外から穴掘ってウェールズを急襲だ、完璧、よしッ!! 「そうだよ。セッコは僕の可愛いヴェルダンデを知ってたのかい?」 「ああ、いつもそいつとシルフィードとオレで、食堂の力仕事手伝って飯もらってるぜ。」 「ヴェ、ヴェルダンデ・・・変なもの食べちゃダメだよ?」 ヴェルダンデは我関せずといった調子で鼻をならした。 ルイズが横から口を挟む。 「ねえ、ギーシュ。ダメよ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」 「当然。[モグラ]だからな。けど、ヴェルダンデは馬ぐらいなら追いつけるよ。」 「そういう問題じゃないわ。わたしたちが行くのって、アルビオンでしょ」 「あ・・・」 「脳がマヌケね。」 「お別れなんてつらすぎる・・・僕はギリギリまで諦めないぞ!」 「残念ね。」 アルビオンって島なのかよ。結局ヴェルダンデも使えねえのか・・・うう・・・ とりあえずギーシュと一緒になって撫でておく。本当に残念だ。 その時、突然ヴェルダンデが鼻をひくつかせてルイズに飛びついた。 「な、なによこのモグラ」 「なーギーシュ。ヴェルダンデはなにやってんだ?」 ルイズとヴェルダンデが取っ組み合っている。 「この!無礼なモグラね!姫さまに頂いた指輪に触らないで!ああもう!」 「多分その指輪に引き寄せられたんじゃないか? ヴェルダンデは宝石とか希少鉱物が大好きだからね」 「宝石まで探せるのか、すげえなあ。ギーシュオメーにゃもったいねえぜ。」 「いつかはふさわしい主になってみせるさ」 「当分無理じゃねえかあ?」 と、一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくヴェルダンデを吹き飛ばした。 「誰だッ!!!」 ギーシュが激昂してわめいた。 朝もやの中から、一人の男が現れた。羽帽子を被っている。こいつも貴族かあ? んんー?どっかで見たことあるなあ。 「貴様、僕のヴェルダンデになにをするだぁー!」 ギーシュが薔薇の造花を掲げる。 が、それよりも早く羽帽子の男が杖?を抜き、ギーシュのそれを吹き飛ばした。 「僕は敵じゃない。姫殿下より、君たちに同行することを命じられてね。君たちだけではやはり心もとないらしい。 しかし、お忍びの任務であるゆえ一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」 その男は帽子を取ると一礼した。 なんだ、でかい帽子を被ってなければかっこいいじゃねえか。 「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 ワルドはしょぼくれたギーシュを見て、声をかけた。 「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを見て見ぬ振りはできなくてね」 婚約者ねえ。貴族って大変だな。 ルイズは目を輝かせてワルドを見ている。 「ワルドさま・・・」 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!」 ワルドはルイズを抱え上げた。ルイズは頬を染めている。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは、まるで羽のようだね!」 「・・・お恥ずかしいですわ」 「彼らを、紹介してくれたまえ」 言うとワルドはルイズを下ろした。 「あ、あの・・・ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のセッコです」 「きみがルイズの使い魔かい?人・・・だよね?」 ワルドが近寄ってくる。 「僕の婚約者がお世話になっているよ」 「・・・うん。」 セッコはワルドを観察した。さっき風を起こしたということはメイジなんだろう。 だが、いい体してやがるなあ。きっと体術もそこそこいけるに違えねえ。 こんな奴をよこすなら、最初からこいつにやらせりゃいいじゃねえか。 いや、もしかするとむしろこいつの方が微妙に信用されてないのかあ? 今考えることじゃねーな。さっさと馬に乗ろう。 ワルドが口笛を吹くと、昨日見たライオンの胴体に鳥の頭がついた珍獣が現れた。 よく見ると羽が生えている。 グリフォン隊隊長つってたし、きっとこれがグリフォンなんだろ。多分。 ひらりとそれに跨ると、ルイズを手招きした。 「おいで、ルイズ」 ルイズはしばらく躊躇った後、グリフォンに乗った。 うー、くそお、やはりタバサと連絡を取っておくべきだった。 グリフォンの速さはわからねーが、2人が飛んで2人が馬とか冗談きついぜ。 ワルドが杖?を掲げ叫ぶ。 「では諸君!出撃だ!」 グリフォンが駆け出す。セッコとギーシュもそれに続いた。 空を見る。置いていかれると思ったが、意外にも馬と大差ない。 半分は鳥じゃねえから、鳥の半分の速度ってわけかあ。ふうん。 車とかあれば楽なのによお・・・ねえんだろうな、多分。 港町ラ・ロシェールは、トリステインから離れること馬で約2日、アルビオンへの玄関口である。 小さな町で、人口は300ほどでしかないが、アルビオンを行き来する人々で常に十倍以上の人間が町を闊歩している。 狭い山道を挟む崖の一枚岩を、土の魔法で住居に加工しているため、昼でも薄暗い。 更にそこから奥へと入った安居酒屋「金の酒樽亭」で、フーケと白仮面の男が話をしていた。 「連中が出発した」 「あんたに言われたとおり傭兵は雇ったよ。」 「で、こいつらは信用できるのかね?」 居酒屋の中はたった今フーケに雇われた傭兵でごった返していた。 「できるわけないじゃない、今前金を叩きつけたばかりよ。 そもそも人を選ぶ時間もなかったし。」 「まあ、そうだろうな。少し喝を入れてやるか」 「いいんじゃない?」 魔法学院を出発させて以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしである。 セッコとギーシュは既に2匹の馬を交換しているが、グリフォンはそのまま頑張っている。 なるほどな、そう早くなくてもスタミナがあるってわけかあ。 しかし、馬って使えねえなあ、腰痛いし。 「ちょっと、ペースが速くない?」 ルイズの口調は、ワルドと雑談を続ける間に元に戻っていた。 「へばったら、置いていけばいい。見た感じラ・ロシェールまでぐらい持ちそうだがね」 「そういうわけにはいかないわ。」 「どうして?」 「だって、仲間じゃない。それに、ギーシュはともかくセッコは重要な戦力よ。」 「そうは見えないがねえ。もしかしてきみの恋人だったりするのかい?」 ワルドは笑いながら言った。 「こ、恋人なんかじゃないわ」 ルイズは顔を赤らめた。そしてちょっと考える。 セッコの能力を知らせておこうかしら? いや、やめておこう。戦闘になってからでも遅くはないわよね。 「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」 「お、親が決めたことじゃない」 「僕のことが嫌いかい?」 「そんなわけないじゃない!」 「はは、それは良かった」 わたしが結婚、ねえ。 まだそれに現実味を感じられないルイズではあった。 「もう半日以上、走りっぱなしだ。魔法衛士隊の連中は化け物か」 ギーシュが馬に体を預けて口を開く。 「バカ、ありゃあの動物がタフなんだ、人は関係ねえ。ルイズを見てみろよお。」 それにしても馬って奴は。 「秘密任務なら、風竜の一匹ぐらい貸してくれてもよかったのに。そう思わないかい?セッコ」 テメーがいなけりゃシルフィードの力を借りる予定だったんだよお。 「来なきゃよかったんじゃねえの?」 「そういうわけにはいかないよ。姫殿下を助けるのは貴族の義務だ」 「そうか。」 馬を乗り潰すこと4匹。何とかセッコたちはその日のうちにラ・ロシェールの入り口に着いた。深夜だが。 あれえ?確かにルイズは港町、つってたよな?何だこりゃ。 街並みは峡谷に挟まれている。 「なあ、ギーシュよお」 「なんだい?」 「ラ・ロシェールって港町だよな?」 「そうだけど、どうかしたのか?」 「うう・・・」 ギーシュの答えは要領を得ない。 その時不意に崖の上から、松明が何本も投げ込まれてきた。 その拍子に馬が驚きセッコとギーシュは振り落とされてしまう。 「な、なんだ!、奇襲か!」 ギーシュが怒鳴った。 そこを狙って何本もの矢が夜風を裂いて飛んでくる。 ああ、畜生。なんかあるとは思ってたがよお。 とりあえずギーシュを馬の影に向かって蹴り飛ばし、鞘に入ったままのデルフリンガーで矢を叩き落とす。 「痛っつ、何するんだ!」 ギーシュがわめいている。 「壁でも作って待ってろお。」 潜るルートを考えつつ、再び飛んでくる矢を適当に捌こうとした所で、目の前に小型の竜巻が現れた。 慌てて後ろに跳び退る。 「大丈夫か!」 ワルドの声が聞こえる。大丈夫かじゃねえよ、邪魔するな。 「その様子だと平気そうだね、すまなかった。・・・夜盗か山賊の類か?」 降りてきたワルドが呟く。 ルイズも呟いた。 「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも・・・」 「貴族なら、弓は使わんだろう」 いや、その理屈はおかしい。つーかそう言うワルドの杖はどう見ても剣だ。 弓や槍持ったメイジも絶対どっかにいるだろ。賭けてもいいぜ。 そんなことを思っていると、聞きなれた羽音が聞こえてきた。 シルフィードかあ? 同時に、崖の上から男たちの叫び声が聞こえ、そしてばらばらと落下してくる。 「おや、風の呪文じゃないか。」 ワルドが微妙な表情になった。そしてシルフィードが地面に降りてくる。 「うおお、どうしたシルフィード」 「きゅいきゅい!」 そして、その上から何故かキュルケが飛び降りてきて、髪をかきあげた。 「お待たせ、ルイズ」 ルイズがグリフォンから飛び降りて、キュルケに怒鳴った。 「お待たせじゃないわよ!何しにきたのよ!」 「助けにきてあげたんじゃないの。朝方、窓から見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こしてあとをつけたのよ」 キュルケは風竜の上のタバサを指差した。 しかし・・・ タバサはなんとしっかりと服を着込み、荷物まで持っていた。 絶対前もって準備してた雰囲気である。 「ツェルプストー。あのねえ、これはお忍びなのよ?」 「お忍び?だったら、そう言いなさいよ。言ってくれなきゃわからないじゃない。 あなたたちを襲った相手も捕まえたんだし、感謝しなさいよね?」 そう言ってキュルケは誇らしげに笑った。落ちてきた男たちが呻いている。 いや、全部聞いてたから知ってますけどね。 ルイズが心配だから応援に来た、なんて言えないじゃないの。タバサはタバサで何か考えがありそうだし。 「助けは嬉しいが、あまり深入りはしてほしくないな」 ワルドが首をかしげる。 「加減するから、大丈夫よ」 キュルケは笑った。本当は言い寄ってやろうと思ったのだが、先手を打たれてしまった。 そこまで好みじゃないしいいけど。 「あれは、放置?」 タバサが男たちを指差して、シルフィードを撫でていたセッコに言った。 「そんなのもいたな、一応話聞いてやるかあ。」 「情報一番」 敵から話を聞くときはどうするんだったっけな。 確か、えーと、足先から、あー・・・んと・・・ 思い出した、切らなきゃなあ。デルフリンガーを引き抜く。 「よう相棒久しぶり。寂しかったぜ」 「喜べデルフリンガー。」 「どうしたよ」 「ちょっと静かにしててくれよお。」 「ああ、かまわねえぜ」 うー、36等分ってどのぐらいずつ切ればいいんだろ? 適当でいいかあ。どうせ多分死ぬし。 「なー、ちょっと話聞かせてくれるよなあ?」 「おめえらに話すことなんかこれっぽっちもねえよ!」 「そーかあ。それは残念だぜえ。」 「急いでたんだろ?さっさと行ってくれ!」 「まあ、そう言うなよお。な。」 深夜の渓谷に、偶然セッコから一番近い場所に転がっていた不幸な男と、その横にいたもう一人の絶叫と断末魔が響いた。 「あ、相棒ってわりと乱暴だな・・・」 「そうかなあ。」 ちゃんと話聞けたしルイズに報告するかあ。 「仮面の貴族と、貴族じゃない女メイジの2人に雇われた。怪しいけど給金が凄かったから受けた。 つってたぜ。」 「そ、そう。やっぱり貴族派かしら?もう危ないのね・・・」 ルイズの様子がおかしい、震えている。なんでだ? 「ふむ・・・既に情報が漏れているとは予想外だな、なるべく急ごうか。」 ワルドはそんなルイズを抱きかかえて、ひらりとグリフォンに跨った。 「今日はラ・ロシェールに一泊して、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」 ワルドは一行にそう告げた。 「それはいいんだけどよお、ギーシュはどこ行ったんだあ?」 皆が首をかしげる。 すると、矢が数本刺さった青銅のドームの影からギーシュが姿を現した。 「あれ、賊はどうなったんだい?」 「「「「「・・・」」」」」 道の向こうに、ラ・ロシェールの町の灯りが怪しく輝いていた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/672.html
不死の使い魔 召喚1回目 不死の使い魔 召喚2回目 不死の使い魔 召喚3回目 不死の使い魔 召喚4回目 不死の使い魔 召喚5回目 不死の使い魔 召喚6回目 不死の使い魔 召喚7回目 不死の使い魔 召喚8回目 不死の使い魔 召喚9回目 不死の使い魔 召喚10回目 不死の使い魔 召喚11回目 不死の使い魔 召喚12回目 不死の使い魔 召喚13回目